第213章

 しかし、会社の仕事は山積みだった。

 彼女は朝五時から午後四時まで働き詰め、ようやくデスク周りを片付けると、隣の同僚に声をかけた。

「お先に失礼します」

「うん、私もこれ終わらせたら帰るよ」

 前田南は地下駐車場へ向かい、車を出す。最近は仕事のことで気が滅入っており、道中も気分は晴れなかった。

 だが、幼稚園が近づくにつれて、彼女は無理やり自分を奮い立たせた。

 どんなことがあっても、悪い感情を子供に持ち込んではいけない。

 そう思うと、前田南は車を路肩に停め、ミラーに向かって口紅を塗り直した。血色が良くなったのを確認し、ようやく笑顔を浮かべて車を降りる。

 幼稚園の降園時...

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